「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉に、あなたはどんな印象を抱きますか?
「やる気がない」「会社に対する不満の表れ」など、ネガティブな見方をされがちなこの言葉。しかし実は、静かな退職は、時代の変化に応じた「戦略的な働き方」という側面もあります。
今回は、静かな退職を選ぶ人たちの特徴や、その働き方がもたらす職場への影響について、書いてみたいと思います。
静かな退職は「サボり」ではない
「静かな退職」という言葉は、誤解されがちです。
「退職」という言葉がどうしても強く響くため、「もううちの会社で働かないんでしょう?」と受け取られがちなんですよね。
退職日が決まって、あとは残りの日々を引き継ぎなんかで過ごすだけ、みたいな。
実際には仕事を辞めるわけでも、手を抜くわけでもありません。
むしろ、自分の仕事や役割をしっかり分析し、見極め、「必要以上の責任や期待に応えすぎない」姿勢こそがこの言葉の本質です。
かつては「会社に尽くせば報われる」という価値観が、当たり前のように根付いていました。
でもその価値観は、現代では通用しづらくなっています。
昇進や終身雇用に対する期待は、すっかり薄れてきましたよね。
その一方で「成果主義」が当たり前になり、社員一人ひとりに求められるパフォーマンスは年々高くなっています。
このような環境の中で、与えられた以上の仕事を抱え込んだり、残業や休日出勤をこなすことが「普通」になってしまっている人も少なくありません。
本当、、疲れます。。
その結果、体調を崩してしまったり、そこまで頑張ったのにまったく評価されず、ただ消耗して終わる・・そんな経験をした人も多いのではないでしょうか。
なんだか会社に都合よく使われてるだけなんじゃないかな、って感じてしまいますよね。
そうした中で、与えられた仕事をしっかりこなしつつ、それ以上の「サービス残業」はできるだけ控えるという選択は、むしろ今の時代に合った働き方です。自分の時間や健康を守る手段として、静かな退職を選ぶ人が増えるのも自然な流れといえるでしょう。
静かな退職を選ぶ人の共通点

静かな退職を選ぶ人には、どんな共通点があるのでしょうか?
私のまわりやSNSでの声から、いくつかの特徴が見えてきます。
- 時間の価値を理解している
長時間働けば評価される時代は終わりました。限られた時間を効率よく使い、自分の人生を充実させたいと考える人が多いです。
- 自分の価値観を大切にしている
他人や会社の価値観に流されず、自分にとって何が大切かを見極めて行動しています。「人生における仕事の優先度は高くない」と考えるタイプも多く見られます。
- 感情のセルフコントロールができている
あえて“静かに”仕事量を調整する姿勢は、感情を暴発させない冷静さを持ち合わせている証拠でもあります。衝突を避け、理性で行動しているとも言えるでしょう。
- 副業や転職などの「選択肢」を持っている
静かな退職をする人の多くは、次の一手を考えています。すぐに辞めるわけではなく、「今の職場にすべてを賭けない」ことを前提に動いているのです。
会社にとっても、悪いことばかりではない

一見すると、社員のやる気が下がったように見える「静かな退職」ですが、実は企業にとってもプラスに働く面があります。
限界まで頑張り続け、最終的に燃え尽きてしまう・・そんな働き方は、現代では難しくなってきていますね。静かな退職という選択は、自分を守りながら、無理なく仕事と向き合うための「持続可能な働き方」と言えるのではないでしょうか。
感情的に辞める人や、いきなりの退職が減ることで、組織の安定にもつながります。
静かに自己調整できる人は、むしろ「続ける力」を持っているとも言えるのです。
また、「やらなくても問題ない仕事」や「属人化されたタスク」が浮き彫りになるきっかけにもなり、結果として業務改善のヒントが得られる可能性もあります。
まとめ。管理職の視点
管理職の立場から言わせてもらうと、静かな退職を選ぶ社員ばかりになると、会社全体の士気が上がらないのではないかという不安があります。頼りたいときに「無理してくれない」感じもあり、チームの柔軟性に欠けてしまうこともあるからです。
一方で、与えた仕事はきちんとこなしてくれるため、最低限の成果が安定して得られるのは安心感があります。また、自分のペースを守って働いている分、突然の退職や不満の爆発といったリスクが少ないのも大きなメリットです。
さらに、社員の「引き算」の働き方を見ることで、「実は不要だった業務」や「やりすぎていた業務」に気づくきっかけにもなります。一部の社員に仕事が偏っていた場合は、チーム全体の業務配分を見直す機会にもつながります。
とはいえ、忙しい時期に「それは私の担当ではありません」と断られてしまうと、チームとしての機動力が落ちてしまうのも事実です。積極性が見えにくい社員に対して、大きなプロジェクトや重要な業務を任せる判断がしづらくなるという悩みもあります。
管理職としては戸惑う部分もありますが、こうした価値観の変化を受け入れながら、組織全体の働き方や評価のあり方を見直す機会にしていくことが、これからのマネジメントには求められているのかもしれません。
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