「あ、その資料は〇〇さんしかわからないよ」
「それは〇〇さんが担当だね」
この業務は、あの人しか分からない。
管理部門で働いていると、こうした言葉を一度は耳にします。
というより、〇〇に一番多く当てはまっているのは、弊社ではわたしなんですが・・・
経理、総務、労務、ITインフラ。
どの領域でも、特定の人に業務が集中してしまう「属人化」は珍しい現象ではありません。
ひとりの人に仕事が集まるのは、優秀さの裏返しのようにも見えますね。
しかし、それは本当に「優秀さの証明」なのでしょうか。
実際には、業務がブラックボックス化しているだけです。
「その人しか分からない」仕事ばかりでは、会社は安定して回りません。
その人が辞めたらどうなるのか。体調を崩して休んだらどうなるのか。
属人化とは、リスクを抱え込んでいる状態です。
経営陣もそれは分かっています。
では、わかっているのになぜ属人化は起きるのでしょうか。
「投資」は後回しにされがち
属人化の大きな原因は、「仕組みへの投資」が後回しにされることです。
たとえば、マニュアル作成、業務フローの整備、クラウドシステムの導入。
これらはすぐに売上を生むわけではありません。
なので、あとまわし、です。
特に管理部門は、「直接的に利益を作る部署ではない」と見られがちなんですよね。
確かに売り上げを作る仕事、とは言えません。
そのため、仕組み化への予算や時間は後回しにされやすいのです。
結果としてどうなるか。
- 業務は個人の経験に依存する
- 手順は頭の中にしかない
- 例外対応はすべて「ベテラン判断」になる
属人化はたまたま起きることではありません。
仕組みに投資しない結果の積み重ね、です。
なんとかしたい。でもその時間がない
「忙しくて、マニュアルを書く時間がない」
これもよくある理由です。
実際、「この仕事のマニュアル化お願い」なんて頼まれても、すぐに取り掛かるのって難しくないですか?
日々の請求処理、支払業務、月次決算、労務対応、社内問い合わせ。
管理部門は常に細かいタスクに追われていますからね。
マニュアル作りは本来であれば、
- 業務を棚卸しする
- フローを整理する
- 手順を文書化する
といった工程が必要です。
しかし現実には、目の前の業務をこなすだけで一日が終わってしまいます。
結果として、
- 整備する時間がない
- 整備されないからさらに忙しくなる
- 忙しいから属人化が進む(ひとりでやっちゃう)
という循環が生まれます。
属人化は、怠慢ではないんですよ。
目の前の業務に追われ、仕事を整理する時間を確保できないだけです。

管理部門は成果が見えにくい
属人化が解消されにくいもう一つの理由は、「成果の見えにくさ」です。
営業であれば、売上という明確な指標があります。
しかし管理部門の仕事は、「何も起きないこと」が理想です。
- 事故が起きない
- ミスが発生しない
- クレームが来ない
これらは成果ですが、数字としては見えにくい。
そのため、
- 仕組みを整えた
- マニュアルを整備した
- 権限を分散した
といった取り組みは評価されにくい傾向があります。
頑張って変えても、周りからは変わってないように見えるんですよね。
評価されにくいものには、投資もされにくいわけです。
あとは心理的な面も影響ありますね。
管理職やベテラン担当者ほど、
「自分でやった方が早い」
「説明するより自分が処理した方が確実」
と考えがちです。わたしもこれはそうなんです。
短期的には正しい判断です。慣れているわけですし、ミスも少ないですから。
しかし長期的には、業務が個人に固定化されます。
引き継ぎが行われず、ノウハウが共有されないまま、
業務はその人の退職や異動とともに大きなリスクになります。
属人化は、優秀さの証明ではありません。
仕組みよりも個人を優先している状態と言えますね。
属人化は人の問題ではない
ここまで整理すると分かるように、属人化の原因は「人」ではありません。
- 投資が後回しになる文化
- 忙しさの連鎖
- 成果の見えにくさ
- 個人依存の心理
これらが重なって生まれています。
属人化を「担当者の問題」と捉えてしまうと、解決策も誤ります。
重要なのは、設計の問題として捉えることです。
仕組みを整えなかった結果が、属人化です。
属人化は単に非効率というだけではありません。
実際には、時間・疲労・退職リスク・事故といった形で、会社にコストをもたらします。
属人化は、設計の結果です。

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