社長から呼び出しを受けると、少し緊張感を覚えますね。
事前に指示されて用意した資料から、経営に関する話だということは予想していました。
おそらく決算に向けた話か、それともこれからの経営方針についてか。
そんなことを考えながら会議室へ向かいます。
会議室のドアが閉まる音を聞くと、自然と背筋が伸びました。
そして、予想は当たっていました。
社長から示されたのは、これまで長年培ってきた販売先や営業先を大きく見直すという、経営方針の転換です。
もちろん、それは「すべてを切り替える」という単純な話ではありません。
長年お付き合いのある主力のお客様とは、これから丁寧に話し合いを重ねていく必要があります。
お互いに商品を開発し、一緒に市場を作ってきた相手です。
いきなり取引をなくすようなことは、お互いにとって大きな損失になります。
それでも、会社の方向を大きく変える。
そんな話でした。

財務担当として見えていた現実
経理や財務を担当していると、毎月数字を見ることになります。
それが仕事ですからね。
本当に毎日毎日、数字を追いかける仕事です。
弊社の売上は大きく落ちているわけではありません。
しかし、原価は上がり続けています。
販売価格にすべてを転嫁できるわけもなく、利益を削りながら事業を続けている状態です。
多くの企業がそうでしょうね。
そして、価格改定も行いました。
もちろん一定の効果はあります。
ですが、それだけでは、この流れを根本的に変えることはできません。
このまま同じことを続けていても、売上は大きく伸びず、利益だけが少しずつ、少しずつ、削られていく。
数字を見ている立場として、その現実を否定することはできませんでした。
社長は昨日思いついたわけではない
社長が話してくれた内容は、昨日今日思いついたものではありません。
毎月の数字を見て。
利益を見て。
原価の上昇を見て。
会社の未来を考え続けた結果なのでしょう。
会社には社員がいます。
その先には、それぞれの家庭があります。
会社は銀行から融資も受けています。
簡単には潰せません。
潰れるわけにはいきません。
だからこそ、今まで築いてきたものを変えるという、大きな決断に至ったのだと思います。
「反対です」と言える話ではありませんでした
その話を、財務担当であるわたしに共有してくれました。
まだ正式な決定事項ではありません。
社内へ方針を示す前に、財務の視点から問題がないか、意見を聞いておきたいということでした。
ですが。
そこまで考え抜かれた経営判断に対して、「反対です」と簡単に言えるほど、軽い話ではありません。
正直、壊れた人形のように首を振っていただけでしたね(苦笑)
事前に新方針を聞いていれば、いくらかシミュレーションを作ることもできたと言えばできたのですが。
もっとも。
本音を言えば、意見は社長と同じでした。
このまま何もしなければ、会社はゆっくりと体力を失っていくだけ。
ならば、まだ動けるうちに思い切って舵を切る。
その方が後悔は少ないと思ったのです。
変えないことにも、リスクはある
「変える」という言葉には、どうしてもリスクのイメージがありますね。
今回あらためて感じたのは、「変えないこと」にも同じくらいリスクがあるということでした。
今まで通りを続けることは、一見、安全に見えます。
しかし、市場や原価、時代そのものが変わっている中で、自分たちだけが変わらなければ、それは少しずつ競争力を失っていくことでもあります。
だからこそ、会社の未来を預かる経営者は、大きな決断を求められる時がきます。
成功する保証はありません。
もちろん失敗する可能性もあります。
それでも、「変えないリスク」と「変えるリスク」の両方があるのなら、未来につながる可能性のある方を選ぶ。
それが、大きな責任を背負う経営者だけに許された決断なんですよね。
まとめ
そんなことを書いていますが、冷静に考えると、この話はわたし自身の人生にも影響があります。
この改革がうまくいけば、会社は新しいステージへ進むかもしれません。
逆に、思うような結果が出なければ、わたし自身が転職活動をする未来だって十分考えられます。
できれば平々凡々と定年まで勤めたい気持ちはあるんですけどね。
ただ、もし「倒産してから転職する」のと、「会社が本気で生き残ろうと挑戦した結果、転職する」のとでは、後者の方が納得できる気がします。
未来は誰にも分かりません。
このご時世、倒産のリスクは、どこの会社にもあります。
ただ、それを意識しているか、していないかの違いだと思うんですよね。
だからこそ、わたしたち社員にできることは、自分の仕事を一つひとつ丁寧に積み重ねていくことです。
会社の未来を決めるのは経営者ですが、その未来を支えるのは、日々の仕事を積み重ねる社員ですからね。


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